石炭や石油などの化石燃料の発見は世界の文明を急速に発展させ、世の中はとても便利になった。しかし、石油や石炭は、いつかはなくなる資源であり、便利さの反面、環境問題を引き起こす原因とも言われている。原子力エネルギーにしても、事故が起こると、とんでもない環境問題を引き起こす。これからあと50年、100年後のエネルギー事情はいったいどうなっているのだろうか。もしかしたら石油はすでになくなっているかもしれない。そんな中、新たに注目されているのが、バイオマス(生物資源)というもの。
 バイオマスとは、生物資源を原料にしたエネルギー資源ことで、自然環境の中で繰り返し得られるエネルギーのこと。木材や竹、天然ゴム、林業廃棄物、未利用植物、下水汚泥や食品廃棄物、海藻や漁業廃棄物などさまざまなものがある。これらを有効活用することが環境・資源問題の解決策のひとつとして世界的に注目されている。
 実は、ヘンプ(大麻)もそのひとつ。近年、衣料、紙、建材、自動車部品、化粧品など多様な用途に使える植物として、世界的に注目を浴びているバイオマスの象徴的存在なのだ。ヘンプは、茎に豊富に含まれているセルロースからはエタノールが抽出できるほか、近年では建築資材やプラスチック原料としても活用されている。種子には良質のタンパク質が含まれており食品としての利用も注目されている。
 そうした流れの中で、2002年、日本ではNPO法人「ヘンプ普及協会」による、ヘンプカープロジェクトが試みられた。麻の実のオイルを改質したバイオディーゼルを燃料としたキャンピングカーが4か月間にわたり全国12,500kmを走破。ヘンプが持つその無限の可能性を証明して見せた。
 そして、今回、お話をうかがった「麻ことのはなし」著者・中山康直氏はこう話す。「ヘンプから創出されるものは、産業や環境、健康というものだけだと思いがちですが、実はもっと深い精神文化とも関係があるんです。なぜ神社に麻が多岐に渡って使われているのか? 麻というものは、環境にいいものを創出するだけではなくて、人間の根底である進化と関係あるものだと、自分の中で確信しているんです。だから、戦後途絶えてしまっている麻のある暮らしをもう一度復興していきたい。また、日本は、エネルギー自給率が非常に低いので、石油資源の枯渇に対してのあおりを一番に受ける国でもあるんです。そんな中で、地下資源じゃなくて、地上資源のバイオマスに着眼して、麻をはじめ、その辺の木とか草とか雑草みたいなものを総動員することで、エネルギー自給率が上がるんです。その辺の一番コアな循環型社会の構築をしていきたい。パーマカルチャーを超えた、農と仕事と趣味とそして芸術と遊びが全部一体になったようなライフスタイルを目指しているんです」
 石油というものは便利なものだと思う。でもそれを使って50数年間かそこらで、実際にはイメージしていた世の中とは違ったわけで、継続していくことが難しくなってきている。社会全体がいま大切なことはなんなのかを考えるターニングポイントにきているのではないだろうか。
 温故知新という言葉がある。過去の知恵と現代の技術が結びつくことで、今、新しいエネルギーの利用形態が生まれつつある。

◆今回、ご協力いただいたNPO法人「ヘンプ普及協会」では、ヘンプの持つ可能性を実際に形にした、衣食住さまざまな商品を販売しています。ホームページでぜひチェックしてみてください。また、文中に出てくる「麻ことのはなし」という本のことも、ここで分かるはず。    
http://www.partie.net/hpsa/

NPO法人「ヘンプ普及協会」・井野口貴春氏/「麻ことのはなし」著者・中山康直氏、ご協力ありがとうございました。