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「ドラックストア・カウボーイ」「グット・ウィル・ハンティング 旅立ち」等の良質な作品で知られるガス・ヴァン・サントの最新作「エレファント」は、最小限にエンターテイメント性を押さえ、オーディエンスの頭中のイメージとコラボレーションする事によって、主題が急激に浮き彫りとなる新しい形のエンターテイメント芸術だ。
1999年4月20日。このヒトラー生誕の呪われた日にコロラド州コロンバイン高校で起きた、在学生による銃乱射事件を題材にした作品では「ボウリング・フォー・コロンバイン」が著名だが、本作「エレファント」もまた、同事件を引用した新たなる傑作だ。
3000人の一般高校生をオーディションし、その中でチョイスされた出演者達に本名で演じさせ、役柄のバックボーンすらも実際の人生をなぞる形を敢えてとった。よって、台詞すら、かなりの比重で出演者に委ねられたわけである。この個性溢れる演出により、ドキュメンタリーと脚本の境界線が曖昧となる。素に近い運命の一日を、日常の高校生活と捉えた上で、複数の登場人物の同一時間を異なる視点で落とし込んで行く。
背後から追う、ハンディカメラの長撮りの技法を、オムニバス形式で積み重ねる事により、各々のパーソナルが自然にオーディエンスに擦り込まれ、折り重なった日常は交差し、やがて悲劇へと向かう。
ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマンのオマージュともいえる、ワンシーン・ワンショットの長撮りにより、配役のバックボーンは観る人の数だけ表出し、本来、映画作品の支柱となる主題はオーディエンスに委ねられる。斬新かつ大胆な技法であり一方で突き放された感覚も襲ってくる。
本作品を構成する上で記しておかなければならない重要なコンテンツとして音楽要素がある。カタカナ英語であるサウンドトラックでは、とても言い表せない。言葉足らずであるが、ソニック・デザインとでも呼んだらよいのだろうか? アンビエント・ミュージックの持つ環境音楽本来の意味合いを、レスリー・シャッツは同音楽の原型であるミュージック・コンクレート的解釈で作り上げた。純音楽と学内のノイズの狭間に立ち現れる「象」。複数の全盲者が「象」の違うディテールに触れる、複数の「象」の解釈。複数の校内暴力の解釈。暴力に理由は無い。悲しい事だが、それが全てだ。 |