今年開講される塾の参加申し込みはすでに終了していますが、オープンデイという基礎的な講座とセンター施設及び農場をご案内する日が設けられています。8月には2週間の夏季コースもあります。詳しくはパーマカルチャー・センター・ジャパンまでお問い合わせください。


パーマカルチャー・センター・ジャパン
住所:〒199-0206
   神奈川県津久井郡藤野町牧野1653
電話:0426-89-2088
FAX:0426-89-2224
URL:www.pccj.net
 パーマカルチャーという言葉を耳にしたことがありますか。永久とか永続的という意味を持つパーマネントと、農業のアグリカルチャーをかけあわせた造語。カルチャーには文化の意味も込められ、日本語に訳せば『永続的な農業』あるいは『永続的な文化』となります。
 このパーマカルチャーを提唱したのはオーストラリア人のビル・モリソン。1970年代前半のことです。70年代と言えば、世界中でヒッピームーブメントが起こっていた時代。ディープなヒッピーの多くは自由を求めていたのと同時に、プリミティブなライフスタイルへの回帰もビジョンの中に持っていました。そんなヒッピー文化に影響を受け、オーストラリアの東海岸でパーマカルチャーは生まれ、成長していったに違いありません。
 日本でのパーマカルチャーの広がりは、93年にビル・モリソンが書いた『パーマカルチャー―農的暮らしの永久デザイン』が翻訳発行されたことが、大きな一歩となりました。
 現在、パーマカルチャー・センター・ジャパンのスタッフとして活動なさっている山田貴宏さんは、その本との出会いをこう語ってくれました。
「私も10年前にその本を実際に手にとって、『あ、こういうことをすでに実践しているんだな』ということを知ってびっくりしたんです。私は建築出身で、建築のなかでも環境工学を専門にしていました。建築でも箱だけのデザインをすることに、少し疑問を抱いていたんです。箱だけを作るのではなく、箱と環境とのインターフェイスの部分をぜひデザインしたいと思っていました。そんな時に出会ったのがパーマカルチャーだったんです。パーマカルチャーは生態系を基本としています。動物から植物、微生物まで、生態系のなかにはありとあらゆるものが存在している。それ同士がお互いに、エネルギーとか物質とかでやりとりをしているわけです。お互いがお互いのゴミにならない、ひとつのものが出すものを次に利用する。エサになったりエネルギーになったり。だから結果として、地球では人間以外の生態系にはゴミというものがないわけなんです。そのシステムを人間の暮らしのシステムになんとか応用できないのかということが、パーマカルチャーの基本的な考えなんですね。パーマカルチャーを、農業の一種だと考えていらっしゃる方もいる。けれどそうじゃなくて、農業でも建築でもなんでも、自分の周りにあるすべての要素がデザインの対象なんです。
 すべての要素の関係性やつながりを目指すのがパーマカルチャーの概念なんです。ビル・モリソンさんが言っているのは『最終的な目的は、食べられる森を作ること』。森というのは、生態系のひとつの象徴じゃないですか。ありとあらゆる生命がいて、それがお互い森の中ではいい関係を保っている。我々人間のシステムは、例えばコンビニの袋やファーストフード店の紙コップでも、使い終わった後にはゴミになってどこかへ行ってしまうわけです。ゴミが次の生活のシステムのなかで利用されるということはありません。次の生活のなかで、僕らから出たものがちゃんと有効利用されるようなシステムにしましょう。もちろんリサイクルもしますし、極力資源を使わないようにする。生活のデザインを、地球というものの尺度で考えましょうよ、ということなんです」
 パーマカルチャーとは、食も衣も住も、自分の周りのすべての環境をリンクさせたライフスタイルをデザインすること。当然、地球への深い愛情が不可欠です。負の遺産を残すことなく、どのようにすれば今よりもいい地球環境を次世代へバトンタッチしていけるのか。そのひとつの考え方の基本であり、ひとつの実践がパーマカルチャーなのでしょう。
 山田さんがスタッフとして参加するパーマカルチャー・センター・ジャパンでは、現在塾や講座を開講。3月から12月までの月に一回週末の2日間を利用して行われる塾は、昨年までで150名もの卒業生を送り出しています。
「パーマカルチャーは農法のひとつではありません。いくつかの原則と倫理をふまえ、考え方を応用していけばいい。あとは自分たちのスタイルを作っていきましょうよと。自然農法などを取り入れながら、みんさんやっていらっしゃるようです。
 一言でパーマカルチャーを言いましょうという会話になった時に、大学生の方が『おじいちゃんとおばあちゃんの知恵』と言ったんです。なるほどなと思いましたね。50年前のおじいちゃんやおばあちゃんには、生活の知恵がありました。それが日本のパーマカルチャーなのかもしれません。生活のための知恵、無駄にしないアイデア。我々の世代では忘れてしまったことなんだけれど、今引き継げばまだ間に合うと思うんです。
 日本には百姓という言葉があるじゃないですか。百の姓を束ねる人、つまり百の仕事を持っている人という意味があります。自分の生活の周りにあるすべてのデザインをやっていこうと思うと、すべてのことに自分の手を下さないといけないわけです。食べるものも飲むものも着るものも、家もそう。現代の我々の生活というのは一姓になっているわけですね。僕だったら建築だけ。ひとつだけで残りの99は外注になっているんです。自分のできる姓をひとつずつ増やしていくこと。どんな小さなことでもいいと思うんですね。例えばファーストフード店にいったら、紙コップを使わなくてマグカップを使うとか。ちょっとした土地があれば、簡単に育てられる野菜を植えてみるとか。もちろん自分の食料を全部まかなえるわけではないけれど、パセリだけでもいいと思うし、ミニトマトだけでもいい。バジルをプランターで作ってもいい。ちょっとだけ、自分の生活を変えてみること。99も外注していたことを98に減らす。とりあえずのひとつのスタートだと思うんです。みんなが99を98に減らすことができれば、都市全体から考えれば、ずいぶん変化があるはずです」
 人口密度が342人を超える日本では、循環によってすべてをまかなう生活の実現は、非常に難しい。日々生活していくなかで、利用されることのないゴミはどうしても排出されます。ただゴミをいかに少なくするのかを考え、身の周りの小さなことから実践していくことは難しいことではありません。
 パーマカルチャー、それはすべての共生と循環を想定した、地球にとっても私たち人間にとっても居心地のいい生活の提案に他なりません。