1999年9月21日に起きた台湾大震災。死者および行方不明者は2500人以上にのぼった。台湾のドキュメンタリー映画界の牽引者である呉乙峰(ウー・イフォン)監督は、地震直後、台湾中部の山岳地の村を訪れる。震源地に近く最も甚大な被害を受けたその山地は、一瞬にして土砂が家屋を呑みこみ、地形そのものが変化してしまった。
 大地震後の人々を描いた映画としては、イランのアッバス・キアロスタミ監督の『そして人生はつづく』('92年)が思い出される。震災地に住む、前作『友だちの家はどこ?』に主演した少年2人の安否を確かめる旅を、ドキュメンタリーとフィクションをミックスさせて描き、タイトル通り悲劇にも負けず生きていく人々の姿が心を打つ名作だ。

 ウー・イフォン監督は、一帯がまるで造成地のようになった山のどこかに埋まっている家族を探す人たちと出会う。夫婦ともに東京の中華料理店で働く夫婦は、8歳と6歳の息子、そして彼らの世話を引き受けていた妻の母親の3人を失った。家から離れて働きながら学校に通っていたため難を逃れた10代の姉妹2人は他の家族を全員失った。こうした7人4組の生き残った人たちのその後を監督はほぼ4年間にわたって追う。
 映画は、2人の息子を亡くした夫婦が結婚記念写真を楽しげに撮る風景から始まる。ウー監督は、地震直後の阿鼻叫喚や遺族たちの激しい慟哭などは敢えて避け、少し時間がたって表面上は落ち着いたかに見える7人に少しずつ近づいていくのだ。まだ土に埋まっている家族の遺体発掘作業を見守るために姉妹は仮設住宅から被災地へ毎日通うが、一見するとピクニックでもしているようにすら見える。もちろんその心のうちは大きな悲しみと喪失感と理不尽な運命に対する怒りが充満しているが、それでも7人はそれぞれのペースでその大きな痛手から徐々に回復していく。
 彼らの日常の合間に、監督自身の父親の姿が挿入される。病に倒れ、以前とは別人のように無気力になって死を願う父親に寄り添いながら、監督は自分自身の思いも掘り下げていく。そしてもうこの世では会えない亡き人たちとともに生きていくすべを静かに模索する。そうして人生はつづく、のだ。