『フライング・ブックス 本とことばと音楽の交差点』
山路和広
日本のシティライツをめざして
渋谷で三代続く古書店の若旦那の挑戦と旅


  テレクラや個室ビデオ、そしてアダルトショップにヘルスと、東京の風俗見本市のような街の一角にその書店はある。渋谷古書センターと書かれた扉を開けると、棚の平台にはやはり土地柄というか、売れすじなのであろうビニール袋に包まれた妖しげな本が並んでいる。
 Flying Booksというブックカフェをめざしてやってきたお客さんは、一瞬戸惑いながら、案内表示に従って2階へ上がると、ウッドベースの心地よい響きと、コーヒーの香りに包まれる。周りの猥雑さとはあまりにも対照的なこの店が、本書『フライングブックス』の舞台であり、著者の山路和弘さんが営む古書店+カフェ+イベントスペースという空間である。
 『LIFE』や『TIME』といった洋雑誌から音楽、旅、自然、民俗、文学、文化と15坪ほどの店内に並んでいる本を見れば、この書店のスピリットが伺える。なかでも、「日本のシティライツをめざしたい」と言うように、ビート・ジェネレーションといわれるカウンター・カルチャーに関する書籍の充実ぶりに目を見張る。ギンズバーグやスナイダー、ケルアック、バロウズといった作家・詩人たちの貴重な原書をはじめ、山尾三省、ナナオ・サカキという日本のカウンター・カルチャーを代表する詩人たちの本が並ぶとともに、彼らの盟友でもあった長沢哲夫の詩集をも自らが手がけ、シティライツのファーレンゲッティがそうであったように、版元として、世代を超えた詩人たちの作品を世に送り出している。


晶文社 A5判
上製 248P
1,995円(税込)
 また、可動式の本棚を動かすと、そこは一変してライブスペースとなる。定期的に催されるイベントには著者をはじめ、詩人からミュージシャン、絵描きにコックとさまざまな人間たちが本の中から飛び出し、五感が刺激される立体的な空間へと生まれ変わる。
 本書は、そんな不思議でエネルギーのあるこの店の設立から、イベントの企画運営、インディース出版、音楽レーベルの立ち上げ、そしてビート詩人たちとの交流や自分自身の旅のつれづれまで、この空間を中心にして、人と人がつながり、新しいものが生まれていく日々がドキュメンタリーとして描かれている。
 渋谷という日本でもっとも消費的で刹那的な街を逆手に取りながら、時代や流行を超えた古本に息吹を再び与えようとする著者と、この店が持つ磁場に吸い寄せられるようにしてどこからともなく集う人々……。
 ゲイリー・スナイダーは著作の中で「詩人は空間を超え、時間を超え、場所を超え、自由自在に行き来することができる」と述べている。本書を読むとますます、この店は、詩作に満ちたひとつの作品でもあり、まさにフライング・ブックスの名のとおり、古書店を超え、場所と空間と時間を自由自在に飛び回る、新たな文化創造基地としての可能性を感じさせてくれる。

『ロシアに学ぶ週末術 ダーチャのある暮らし』
豊田菜穂子
とても魅力的に感じる
ダーチャのある生活


 まったく関係のない話なのだが、いま自分たちの田んぼを探している。とても漠然としているのだが、場所は、自分たちの生活圏から車で2時間ぐらいで移動できるところがいいと思っている。仕事をやめるわけにもいかないので、通うためだ。見つかったら近くに拠点がほしい。週末や時間があいている時は、極力、田んぼに行って、農作業をしたいと思っている。それで、いくらかの食べ物ができて、多少、自分たちの家計の足しにしつつ、収穫の喜びを感じられたらいいなと甘い考えを抱いている。そんなことを考えているときに、ダーチャのことを聞いた。知らなかった。ロシアには、こんなに素晴らしい生活があったことを。自分たちがほしいと思っていたのは、まさに、このダーチャだったようだ。


WAVE出版 182P
1,575円(税込)

タカコ・ナカムラのWhole Food でいこう』
タカコ・ナカムラ
ホールフードの精神を伝えるエッセイ集

 自然食やマクロビオティックを学び歩いていくなかでのホールフードへの目覚めから、ブラウンライスの誕生、そして、現在へと至るまでのストーリー。さらには、著者が惚れ込む全国の生産者との深い絆を物語るエピソードや、子育ての考え方などなど、おいしい自然食を提案するブラウンライスカフェのプロデューサーであり、ホールフードスクールの主任講師を努める著者タカコ・ナカムラのホールフードな暮らしの物語がたっぷりと詰まった初のエッセイ集。著者が語るホールフードとは、玄米や野菜など安全で身体によいものをまるごと食べるという考え方。まるごと食べることを実践していくことから、食の安全性、自然環境全体へとその思いは広がってゆく。


自然食通信社 176P
1,680円(税込)