毎年夏になると、なぜフジロックをスケジュールの中心に考えてしまうのだろう。別に音楽にどっぷり浸かっていたいわけではない。キャンプフェスだって他に行ってみたいと思わせる祭りは数多い。フジは人が多すぎて居心地が悪いことだってある。雨が降れば逃げ場所が少ないし、晴れたら晴れたで日陰がなくて体力が消耗する。「好きなバンドが出演しない限りは、もう来なくていいや」と頭の半分では思っていても、いざ夏が近づいてくると、フジロックへ行く気持ちが盛り上がってくる。
 ブルーグラスの現在形とでも言うべきジャムグラス(ブルーグラス+ジャムバンド)の筆頭ヨンダー・マウンテン・ストリング・バンド(YMSB)や、西オーストラリアから飛び出してジョン・バトラーなど、見たいなと感じさせてくれるバンドは少なくなかった。ただ、どうも今年のラインナップは自分にとってインパクトが小さい。99年のPHISHや02年のストリング・チーズ・インシデントのように、どうしても
行かなきゃというわけではない。けれど、結局のところフジロックに自分はいる。それだけ、日本の夏とフジロックは僕のバイオリズムのなかで結ばれているということなのだろう。
 今年も雨が降った。朝は晴れているにもかかわらず、午後になると強い雨が降った。どこに行っても地面は泥でグチャグチャ。ライブの合間に休憩したくても座る場所がない。野外で音楽を楽しむ環境としては、お世辞にも良いとは言えない。
 基本的には、キャンプサイトから最深部のオレンジコートまで一日一往復。だから多くのショーを見ているわけではない。むしろ今年集まったのべ10万人のなかで、実際に見たショーの数は少ない部類に入るだろう。その少ないなかで特に印象に残っているのが、先にも書いたYMSBだ。マンドリン、バンジョー、ギター、アップライトベースというアコースティック・インストゥルメンタルだけの4人編成。アコースティックでありながらも深
いサイケデリックな感覚もある。踊るためのバイブレーションも常に流れている。まさに弦の興宴といった趣だった。ニューオーリンズのパパグロウズ・ファンクが中心となって日本人ギタリストが次々に登場したライトニング・ブルース・ギター・セッションも良かった。フジだからこそ実現できたスペシャルセッションだったに違いない。情報を得られなくて見逃してしまったけれど、ボードウォークのミニステージでロスロボスがシークレットショーを行った。これこそ今年のフジのハイライトだったと断言する友人が多い。その他にもソウル・フラワー・ユニオン、マイ・モーニング・ジャケット、マーキューリー・レヴ……。
 結論として、苗場で7回目の開催となったこの夏も楽しかった。来年もきっと7月最後の週末は苗場にいるのだろう。そして来年こそ、今年できなかったマイ箸作りにチャレンジしようっと。