![]() |
『 PRIVATE WORLD 』
下田昌克 |
|
| 原色と混沌を独自の手法でコラージュした、 708日間におよぶ いきあたりばったりの旅日記。 |
||
|
|
||
| 本書は、中国、チベット、ネパール、インド、ヨーロッパとスケッチブックを片手に3年間の放浪の旅に出た下田昌克さんの極私的な旅日記だ。スケッチブックには、世界の街角で出会った市井の人々が描かれ、そして日記には、旅に対する思いに加え、写真と絵と旅の先々で拾ったラベルやパッケージなどのコラージュワークがちりばめられ、リアルな旅の混沌とした匂いを伝えてくれる。著者であるイラストレーターの下田さんは、“絵描き”と自らを称し、絵本を出したり、本やCDの装丁を手がけたり、挿絵を描いたり、はたまたライブペインティングや立体作品などなど、近年、その活動の場をますます広げている。本書の発行は2002年4月と、刊行から4年が経ったものの、下田さんの名前と作品に光が当てられるにつれ、じわじわと版を重ねてきた。 日記のアートワークといえば、思い出すのがアメリカの日記作家、ピーター・ビアードである。アメリカの上流階級社会に生まれたビアードは、窮屈な都会的な生活に嫌気がさし、少年のころから憧れていたアフリカの奥地へと生活の拠点を移す。アフリカでは自由気ままな自然暮らしをしながら、日記、写真、絵、映像など、あらゆる表現方法を使って野生動物の保護を訴えてきた。 ビアードと下田さんを比べるわけではないが、彼の作品にはビアードを髣髴とさせる熱いソウルがあふれている。近年、パソコンの画面上でデジタル処理されたコラージュワークは多々あるいっぽうで、下田さんの作品は、色鉛筆をスケッチブックに縦横無尽に走らせたイラストはもちろんのこと、写真や包装紙などを、糊とハサミで切り貼りして作った完全なアナログ製。しかも旅の途上、行く先々の現場で作り上げている。そんな共通項がふたりをダブらせるのではないだろうか。 先日、TBSで放映されている『情熱大陸』という番組で、下田さんが紹介されていた。この番組を見た人はみんなきっと感じたと思うが、作品ばかりではなく、下田昌克という人物そのものが魅力的に描かれていた。下田さんが絵を描いているその光景は、絵を描くことの楽しさ、喜びに満ち溢れ、見ているだけでなんだか幸せな気分になってくる。 本書の旅のなかで、下田さんはスペインでピカソ美術館に行っている。そこで下田さんはいみじくも「ピカソの絵も大好きだけど、ピカソという人にすごくひかれてしまった」と書いている。本書のタイトルは、ピカソの写真集『THE PRIVATE WORLD OF PABLO PICASSO』に由来しているのは言うまでもない。(タキザー) |
|
|
![]() 下田昌克(しもだ・まさかつ) 1967年、兵庫県生まれ。雑誌などでの連載、そして、本の挿絵や表紙などで活躍する旅の“絵描き”であり、広告業界やデザイン業界からも注目される新進気鋭のアーティストでもある。著書に絵本『そらのいろみずいろ』(小峰書店)、挿絵に『子ども版 声に出して読みたい日本語 宮沢賢治』(草思社)、『羽がはえたら』(小峰書店)などがある。東京都渋谷区在住。 |
||