

Lj HOME > Live Report > No.008/ジャック・ジョンソン
Text : 宙野さかな



03年の朝霧ジャムで初来日して以来、2回目はフジロック、3回目の昨年は福岡から東京までの7都市を巡るキャパシティ1000人程度のクラブ・サーキットと、形態を変えつつ日本でもファンを拡大していったジャック・ジョンソン。4回目の来日となった今回は、1万5千人ものファンを集める一夜限りのショーがセッティングされた。だだっ広い会場はオールスタンディングでバーも用意されている。海辺の環境保護活動を行っているサーフライダー・ファウンデーションのブースもある。ショーというよりもジャックの音を主役としたパーティーのようだ。
サポートアクトとして一緒にやってきたのがマット・コスタとALO。昨年夏、8月1日のヒューストンから9月14日のニュージャージーまで、全米で33都市を一緒に回った仲間たちだ。
オープニングを飾ったのはマット・コスタ。ひとりでステージに立ち、アコースティック・ギターを手に歌いはじめる。『ソングス・ウィー・シング』ではポップなサウンドも聞かせてくれていたものの、ここではあくまでもその場で演奏することにこだわったのか、ストレートでシンプルなスタイルが続く。
続いて登場したのが、演奏にインプロビゼーションを多様することからジャムバンドのファンからも注目を集めているALO。マット・コスタが静ならばこちらは動。ロックをベースに踊る要素を巧みにブレンドしながら会場を盛り上げていく。インプロのなかに「さくら」のフレーズを入れたり、「ハジメマシテ、ドウゾヨロシク」と日本語の歌を披露したり。サイケデリック・ミュージック〜ジャムバンドのメッカであるサンフランシスコの出身だけあって、オーディエンスを自分たちの味方にする術を知っているのだろう。心地良いグルーブを発散しながらセットを進めていく。"Girl, I Wanna Lay You Down"では、ジャックをステージに登場させ観客の耳と目を釘付けにしていった。
そしてジャック・ジョンソンのステージだ。サポートアクトとは違ったファンの熱気。異様なまでの盛り上がりだ。バンドのメンバーは、ファースト・アルバムからの盟友であるメルロ・ポドゥルフスキ(b)とアダム・トポール(ds)にALOのザック・ギル(kbd)が加わっている。ジャックの歌とアコースティック・ギターをフィーチャーする構成は以前の来日と変わらないものの、ザックがサウンドとパフォーマンスに彩りを加えていく。耳に残るメロディと心地よいリズム、それがグッドバイブとなって会場を包む。音楽を聞くということ以上に、ジャック・ジョンソンという人間を感じたい、同じ場所を共有したい。そんな思いを持ったファンが多かったように思う。
"Never Know"をオープニングに"Good People"まで22曲。3枚目の『イン・ビトウィーン・ドリームス』を中心に、ファーストもセカンドも網羅して披露する。それはジャック・ジョンソンの数年間の足跡をたどっているかのようでもあった。MCでは日本語も交え、ファンとのコミュニケーションをはかっていく。良くも悪くも変わることのないジャックがステージにいた。そしてアンコールでマット・コスタとALOを加え6曲。
なぜジャック・ジョンソンが世界で人気を誇っているのか。それはどんどんスピードを求めている時代に対抗するかのように、ゆったりとしたライフスタイルでも生きていけるんだというメッセージを、音や生き方で投げかけてくれたからに他ならない。音を聞くのと同時に、ジャックという人間を感じること。それが多くのファンが求めていたからなのだろう。
この日本でのショーが終わってジャック・ジョンソンはハワイへ向かった。生まれ故郷であるその地で開催されたKokua Festivalを最後に、2年ほどの長い休憩に入るという。変わらないステージこそが、ジャックから日本のファンへ贈られたメッセージだった。(初出:Player Magazine 2006/7月号)