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No.027/チック・コリア duet with ベラ・フレック

07年10月1日@青山BlUE NOTE TOKYO
これぞDUO。ふたりの「ジャイアント」による究極の時間。

Text : Takashi Kikuchi/Photos:Yasuhisa Yoneda

 観客席後方にある楽屋から、観客の間を通るようにステージに上がっていくふたり。チック・コリアとベラ・フレック。様々な場所で、数々のショーを踏んできたふたりにとっては、この日のライブが特別なことではない。けれど、そこに居合わせたファンひとりひとりにとっては、特別な時間となった。
 チック・コリアは1941年にマサチューセッツ州で生まれた。20代前半からマイルス・デイヴィスと共演。そして71年にリターン・トゥ・フォーエヴァーを結成。ジャズの新しい可能性を提示してくれた。
 一方ベラ・フレックは58年にニューヨークで生まれた。幼少の頃からバンジョーを手にしたベラは、81年にサム・ブッシュらとニュー・グラス・リヴァイバルを結成。「プログレッシブ・ブルーグラス・バンド」と位置づけられたNGRは、後のジャムグラスの礎となった。89年にヴィクター・ウッテンらとともにフレックトーンズを結成。ブルーグラスに留まらず、ジャムバンド・シーンでも人気を獲得している。
 そんなふたりの「ジャイアント」が、デュオアルバム『エンチャントメント』を発表したのは、07年の夏。そしてデュオによる来日公演が実現した。
 アルバムのタイトル通り『魔法』のような時間だった。グランドピアノとバンジョー。インストゥルメンタルはそれしかないのに、様々な音が聞こえてくる。チックがメロディを奏ではじめたかと思えば、自然にベラがリズムを取り、逆にベラが美しい旋律を響かせたかと思えば、チックが低音で優しく支える。呼吸までも、お互いにシンクロさせているかのようだ。メロディもリズムも、表と裏を変幻自在に行き来する。
 インプロビゼーションで大切なことは相手の音を聞くこと。何人ものミュージシャンが、そう応えている。相手の音を聞き、何を求めているかを察知して、自分の身体に吸収する。そして自分の音を放出していく。言葉にすると簡単なようにも感じられるけれど、これが音で感じられることは本当に少ない。無言のコミュニケーションを聞く我々も感じ、ステージに返していく。ジャムとは音を出すことではなく、音を導くことなのかもしれない。
 チック・コリアとベラ・フレック。卓越したテクニックと類いまれなセンスを持つふたりにしか出せない音が、目の前にあり、僕らの身体を包んでくれた夜。デュオだからこそ成り得た魔法。幸福以外の何者でもない時間が、そこにはあった。

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